Baumhaus豊田南 設計ノート

敷地は再開発の区画整備事業が進むJR中央線豊田駅の南で、駅前ロータリーから大通りを300m程下った角地です。周囲は嘗ての田園風景から一変し、戸建やマンションが建ち並ぶ街区に変貌を遂げつつあります。

要望は駅前に建つマンションのようにモダンで冷たい感じのするものではなく、「我が家に帰ってきた」と心安らぐような共同住宅としたいとのことでした。設えはイギリスやドイツの伝統木構造であるハーフティンバー様式とし、温かみがあり洒落ていて、近辺にはない本格的な意匠で纏めて欲しいとのことでした。

貸室は1階をファミリータイプ、2階をワンルーム+ロフトとし、全体的にゆったりとした間取りになっています。1階住戸は1〜2ルームにアイランドキッチンのある一体型のLDK、南に木製のバルコニーが繋がる広々とした間取りで、2階住戸には天井の高い吹き抜けがあり、ドーマー窓より光が降り注ぐ設えとなっています。

大通り側のファサードでは急勾配の切妻の屋根が重なる形とし、大屋根と小屋根が寄り添うような優しげなデザインとしました。親しみやすい印象とするために、煉瓦色の煙突をあしらい、東南のコーナーを独立した小屋状に設えて本格的なハーフティンバー様式でシンボリックに纏め上げました。

エントランスは利便性を踏まえ駅に近い位置としました。広めのアルコーブを設け、アクセントに荒い煉瓦タイル張りのマグサ施し、ロートアイアン製の表札看板、外国製の赤いポストを設置しました。住まいと住まい手の心が通うことを念頭に細分まで丁寧にデザインしました。

貸室なので短い間の居住かも知れませんが、その期間が住まい手にとってとても豊かで印象深いものであって欲しいと願いながら検討を重ねました。竣工時の今、周囲は空き地ばかりですが、今後建物が林立してくることでしょう。そんな中で、住まい手だけではなく前を通る人たちにも、少し温もりを分けてあげられるような建物になればと思います。